<特集3>別府、アートな夜散歩
別府のまちに夜だけ現れる“天使の羽”
実はこれ、トルコ出身でパリを拠点に活動する著名なアーティスト、サルキスの作品なのです。
タイトルは『別府の天使』。天使はこれまでもたびたびサルキスの作品のモチーフとなっており、また、別府のまちを天使のように見守ってほしいという、このプロジェクトのディレクターの願いも込められています。ゆっくりと羽が現れては消えていくそのリズムは、サルキスの呼吸のリズムに合わせたものだそう。昼間は点灯せずにその姿を消し、夜になると現れる、夜しか出会えない作品なのです。
実は、サルキスと別府のまちは以前からつながりがあるといいます。2009年に開催された「混浴温泉世界」という芸術祭の第1回目にサルキスが参加しており、彼の作品に携わったボランティアスタッフをサルキスは「エンジェル」と呼び、現在も交流があるのだそう。
近くからじっくり見上げるのもいいですが、まちを歩きながら、ビルの隙間から見え隠れする作品を見つけるのも一興。まちの風景に溶け込んでいるので、「あ、ここからも見える!」なんてポイントを探しながら散策するのも楽しそうです。
プロジェクトの運営を担う〈BEPPU PROJECT〉の久保優梨子さんは「このプロジェクトには、“湯けむり”のような典型的な風景とは違う別府の姿を見せたいという思いもあります。こんな景色もあるんだなと、楽しみながらまちを巡ってもらえたら」と話します。そして、久保さんが教えてくれたとっておきのスポットがここ。
大分県内の廃材から生まれたアート
『ウォータータワー』は、給水塔をモチーフにしたフルーインの代表的なシリーズ。その10作目となるこの作品は、アメリカ国外では初の設置となるそうです。もちろん昼間でも見ることができますが、日没から23時までライトアップされ、ステンドグラスのような作品はさらに輝きを増します。
この作品を実際に施工したのは、県内の鉄の加工業者が中心だったそう。ふだんは建物の構造物など、竣工すれば隠れてしまったり、あまり意識して人に見られるものではない部分をつくっている人たちが、ものづくりの力を発揮。いつもの仕事と同じように、いいものをつくりたいという思いと高い技術で作品づくりに取り組んだようです。
観光客の目にも留まりやすく、地元の人たちの思いも詰まった、新たな別府のランドマークとなりそうな作品です。
Information
ALTERNATIVE STATE(オルタナティブ・ステート)
Web:https://alternative-state.com
別府との関わりの“はじまり”となる場所
もともとこのエリアはものづくりが盛んで、現在もアーティストやクリエイターが多く暮らし、移住者も増えています。そんなアーティストやクリエイターたちが集結し、宿づくりに参加。館内の随所に彼らの作品が散りばめられています。3・4階の部屋は宿泊者以外は見ることはできませんが、1階のラウンジは喫茶としても利用でき、作品に触れることができます。
まず入ってすぐ、チェックインデスクの背後にある大きな作品に目を奪われます。これは、HAJIMARI Beppuの宿主でもある陶芸家、坂本和歌子さんの作品。海から太陽が昇るイメージを陶器で表現したウォールアートです。坂本さんはこの場所でサテライトアトリエと焼き菓子のショップ〈うみとじかん〉も運営し、坂本さんのすてきな器も購入することができます。
ほかにも、この近所に暮らすイラストレーター網中いづるさんの絵や、豊後大野市にアトリエを構えるアートユニットOlectronicaのオブジェなど、宿主夫妻と関わりのあるアーティストの作品が空間を彩ります。
また、料理家のワタナベマキさんが喫茶で提供するスープの監修をしたり、文筆家の甲斐みのりさんが館内の音楽の選曲やショップで販売する工芸品のプロデュースをするなど、大分県在住のアーティストたちと、別府に惹かれて深く関わるようになったクリエイターたちのコラボレーションで、この場所をつくり上げているのです。
そもそも、HAJIMARI Beppuのコンセプトには、県外や海外から来た人と別府との“はじまり”の場所になりたいという思いがあるそう。夫である光浦高史さんとともに〈DABURA.m〉という建築事務所でこの場所を運営する坂本さんは、「この場所に若い人たちに集まってもらいたい。みんなでまちを盛り上げるような、別府を楽しんでもらえるような場所になりたいと思っています」と話します。
特別な金曜日にはアーティストバーも開催。別府に暮らすさまざまなアーティストがホストとなり、作品を展示したりトークをしたり、そのときによっていろいろなことが起こる予感。「日頃あまりアートに触れない人も、アートが好きだけどどう関わっていいかわからない人も、気軽に来てもらって、アーティストと触れ合ってもらえれば」と坂本さん。これからますますおもしろい場所になりそうです。
店舗情報
店舗名:HAJIMARI Beppu
住所:大分県別府市千代町5-1
営業時間:喫茶ゆあみ 11:00~20:00 ※アーティストバーなどのイベント時は変更の場合あり。SNSなどでご確認ください。
定休日:火・水曜
店舗名:HAJIMARI Beppu
住所:大分県別府市千代町5-1
営業時間:喫茶ゆあみ 11:00~20:00 ※アーティストバーなどのイベント時は変更の場合あり。SNSなどでご確認ください。
定休日:火・水曜
世界的なアーティストの作品にも、すぐそこに暮らしているアーティストにも出会える別府のまち。温泉に浸かったら、散歩しながら、アート作品やこのまちの文化にもゆったり浸かってみませんか。
Credit text & photo COLOCAL(マガジンハウス)
文・榎本市子
写真・ただ(ゆかい)
Credit text & photo COLOCAL(マガジンハウス)
文・榎本市子
写真・ただ(ゆかい)
